みみの会社のブログ_JINO

耳に関するヒト・モノ・コトについてご紹介するブログです。

隈研吾展と猫が考えさせてくれた公共性と目標について

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この記事は隈研吾さんの展覧会で考えた
聴覚情報の公共性に対する目標について書いています。

<仕事の整理>

2021年もあと半年となりましたね!

自分の物理的な年齢のせいなのか

年々1日1日が早く過ぎすぎていて驚きます。

 

東京ではオリンピックまであと数日。

メディアに目を通さないで暮らすと

街中にはオリンピックが開催される空気は感じられないですが

どんな結果になるのか、ですね。

 

そんな日常の中、久々のブログは

隈研吾展で考えたことをお伝えします。

 

緊急事態宣言が出る前の6月に、

東京国立近代美術館で開催されている

隈研吾展 新しい公共性をつくるための猫の5原則」

に行ってきました。

www.momat.go.jp

友人が展示に誘ってくれた時から

タイトルの「公共性」と猫と隈研吾さんが結びつかなすぎでした。

 

建築家というお仕事からして、『公共性と隈さん』の関係は解っても

『公共性と猫』『猫と隈さん』が解らなかったので

どんな展示になっているのか、とても楽しみでした。

 

実際の展示内容は色々な方がご紹介されているので

ご興味あるかたはリンク先から確認なさってみてください。

casabrutus.com

spice.eplus.jp

ざっくりとした説明にはなってしまいますが

隈さんが今まで作り上げられてきた建築物を

「ハコ」として見直すのではなく

「ハコ」から飛び出た隙間にフォーカスを当てることから

パブリックスペースを再定義する というコンセプトで

過去の「ハコ」とその「ハコ」を利用する人の言葉、

「ハコ」を出ていく時に人はどこに向かうのか、

という3つの構成要素のある展覧会でした。

 

コロナ禍という環境が、人を集める、人が集まる

「公共性」の高い「ハコ=場所」を作っていらした隈さんにとって

全ての仕事を見つめなおす機会にもなられた、

と語っていらっしゃったのが印象的でした。

 

展示会場には、隈さんのこれまでの仕事の

一部しか紹介されていないのに、

あまりにも建築模型が多く提示されていて

あ、この人寝てないんじゃないかと心配になるほど

隈さんが人生をかけて仕事をされてらした様子がうかがえ、

そんな方が全ての仕事を見直す機会になったとおっしゃる

この新型コロナの影響の大きさを感じとる面もありました。

 

<ハコから自由に>

展示会場では、それぞれのテーマに則した

隈さんの言葉が語られていました。

物質に対する捉え方の視点が量子物理学的で哲学的で、

公共性とは何かと改めて考えさせられる内容が多かったので

こちら、ご興味ある方は緊急事態宣言明けたら是非。

9月26日(日)までの会期予定です。

 

中でも印象的だったことが2つありました。

1つ目が「粒子」をテーマにした展示についての記載の中に

隈さんは建築を粒子視点でデザインする、とされていたこと。

全てのヒエラルキーやグルーピングに縛られなくなるから。と。

 

2つ目が『800年後の方上庵』の展示。

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800年後の方丈庵模型

これは、ETFEという透明な膜と、2cm×3cmの細い木材

超強力磁石の3つの素材を組み合わせて作られていて

筵のように丸めて持ち運ぶことが出来る移動式住宅。

 

実は個人的に、ムーミンに出てくるスナフキンのような

「旅人」という生き方に憧れているのですが

そんなわたしにはとっても魅力的なハコ=建物でした。

 

なぜ、この2点が魅力的に印象に残ったのか。

私が日々対峙している「聴覚」「聴覚情報」の視点にも

この2つの視点がもっと必要だと感じたからでした。

 

人と直接会う事が推奨されず

オンラインでの関係構築が続く中

聴覚に課題を持つ多くの方が大変な苦労をなさって

メディアでも取り上げられることがありました。

 

以前からずっと存在していた問題であって

コロナ禍の環境が、そのことをより多くの人に

自分ゴト化してくれる機会になったという皮肉な所もあるのですが

聴覚情報に獲得差が生まれる場合に、手話や文字、画像で

その情報を保障するということは公共性の高い事である

という認識が広まった点は嬉しい変化でした。

 

この点は平常の環境下においては、

情報を粒子化して考えられなければ

多くの人には触れられる機会さえ与えられなかったことの1つです。

 

そしてその情報の可視化に対しては

モビリティ加減がとても重要だということ。

 

会議やセミナーのようなハコの中で行われる

対象人数の多いコミュニケーション現場では

聴覚情報の保障として、要約筆記者や手話通訳者が対応したり

テレコイルのループがひかれたり、文字情報がスクリーンに映し出されたり

少しずつですが、そういった環境が増えてきました。

 

反面、アウトドア中やスポーツ中、

移動性の高い場でのコミュニケーション現場には

まだまだ聴覚情報の保障が少ないのが現状です。

 

バイスがない、ということも関係しているかもしれないのですが

筑波大学の研究室の方が開発された

シースルーキャプションのように、

モビリティ性能と可視化効果が高いものが

どんどん出てくると良いなあと思います。

参考記事:

www.tokyo-np.co.jp

 

だれか、ものすごく賢い方、

空気中の塵り投影して空中に字幕表示できるデバイス

開発してくれないかな~と10年くらい言っているのですが

あと10年したら出来ているかもしれないですね!

 

JINOでは補聴器と補聴援助システムを使った

聴覚情報保障をビジネスの柱の1つにしているので

誤解されてしまう事も多いのですが

ミッションに掲げている、聞こえの課題をゼロにするための

解決策が1つだとは考えたことがありません。

 

文字による保障も、手話という言語を使用するのも

画像で表現することも、使う人が自分に合った解決策を

自分で選択できる社会である事。

そんな社会が実現されたとき=聞こえの課題がゼロになる

と考えています。

 

そして、その人が選択した道具や方法が100%の力を発揮できるように

サポートさせていただくことが使命だと思っています。

サポート不要な製品や方法が生まれてくれるのが1番ですが。

 

隈研吾展で最後に登場した猫の視点で建築を考える展示。

ハコから出ざるを得なくなった人間が

ハコとの関係性を見直すときに参考にしたのが

自分で自分の道を切り開いて生きている半ノラちゃん。

隈さんは猫の生き方に人間が学ぶことが多い

と語っていらっしゃいました。

 

自分のいる狭い世界=ハコや

過去の決まり、既成概念にとらわれず

聞こえの課題をゼロにしていく方法を切り開いていこうとする時、

猫のような寄り道やこだわり、関わり合う人に愛されることって

究極的に大切だわ。。とそこでも感銘を受けてしまいました。

 

コロナの影響で普段、

業務内容から少し離れた哲学に触れる事が減ってしまっていましたが

本でも動画でも自分から積極的に視野を広げて

それこそ自分の存在さえも粒子化して

物事に触れて歩くと、事業の長い視点での目標も

紡いでいく事ができるなあという学びのある展示でした。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

暑い日が続きそうですので、適度に水分補給をしながら

元気にお過ごしください。

感想やコメントいただけたら嬉しいです!

 

JINO GOJI