この記事は軽音楽部!難聴派の皆さんに
インタビューした際の様子についてお伝えしています。
<『楽しむこと』の楽しさ>
先日、尊敬する知人の方から
『難聴を持つメンバーで、音楽をバンドみたいな形で楽しんでいる人たちがいるんですよ~』
と伺いました。
速攻で興味をもってしまい、どんなご様子なのかをお伺いしたところ、
ギターやボーカル、ハーモニカにマンドリンなど
それぞれの得意分野で、知っている曲を
楽しく練習していらっしゃる ということ✨
難聴になられると、音楽が昔のように聞こえない、ということや
バンドのように他の人に合わせるのは難しいので諦めた、
という話は残念ながら耳にする機会が多いです。
昨年話題になった中途失聴のドラマの中でも
音楽についてはそんな扱いでしたよね。
難聴のお子さんを持つお母様からもお子さんが
『音楽の授業でみんなに合わせられない』『合わせるのが難しい』
『音痴って言われてから、音楽の授業は大嫌いになった』
など、あまり良い印象の残らないことが多いです。
そんな背景もあり、
実際に練習されていらっしゃる場所を拝見しなくては!!と
練習現場にお邪魔させて頂くことになりました。
))軽音楽部!難聴派のみなさん
当日インタビューをお受けいただいた皆様、
難聴になられた理由も、
使用されているデバイスも
人工内耳の方、人工内耳×補聴器の方、補聴器の方
といった形で見事に異なられています。
それぞれ、ご自分の難聴の状況や聞こえかたがどの程度か、
というような点についてはざっくりと共有されながらも、
『ご自身の出来る事がこんなこと!』という点が大切にされていて、
楽譜を見ながら練習されていらっしゃいました。
文字にしてしまうと、ふ~んそうなんだ。。
となってしまう方もいらっしゃるかも。
そしてそれは私の文才の無さのせいです・・
取材にお邪魔したのは、その場の雰囲気を
直接拝見したかったから。
そしてお邪魔して練習に手拍子で参加させていただいて
何よりも最初に出てきたのは『楽しい~』という気持ちでした。
<馴れ初めと最高の楽しさの理由>
軽音楽部!難聴派 の皆さんに練習の合間にお話を伺いました。
ギター&ボーカルやパーカッションなど幅広く担当される
田村さんご夫婦(写真一番左と左からお2人目)は
ご主人は難聴がなく、若い頃に音楽のご経験が深いとの事で一緒に参加されて、
奥様は難聴になってから、しかもギターはまだ初めて1年!!とのこと。
1年でこんなに弾けちゃうの??と驚いてしまうほどの腕で
ハーモニカ担当の渡辺さん(写真右からお2人目)とお話される中で
『合わなくてもいいからやってみよう!』という感じで始められたとの事。
マンドリン担当の平塚さんはそんなお二人からのお声がけで
一緒に参加されることになられたご様子でした。
楽器の特性がそれぞれ違うのと
皆さんが使っている補聴機器の特性も違うので
耳に入る音域や圧縮されてきこえてくる音の感覚も大きく異なられています。
私が学んで来た補聴機器の定説で考えたら
音楽はとても難しい、はずの状況なのです。
人工内耳は可聴可能な音の大きさの幅が狭い代わりに
小さい音が聞き取りやすい特性があったり、
補聴器も人工内耳も最大音響の抑制機能があったりするので
音楽的な余韻の部分も十分に再現できるとは言い難いレベルであり
(もちろん装用される方の元々の聴力にも大いに左右されますが)
両方とも器械で圧縮される音を再現するので
昔と違う音程に聞こえて辛い、という方も多いものです。
でも。
軽音楽部!難聴派の皆さんの演奏は
そこは超越して、そこは問題じゃない!
と感じさせてもらえる素晴らしい時間でした。
皆さんそれぞれご自分の聞こえ方に工夫をされてもいらして
例えば渡辺さんはご自身の人工内耳と難聴原因の双方の特性で
ギターに比較してマンドリンの音が聞こえ辛いので
ワイヤレスマイクを平塚さんがお付けになって演奏なさっていたり。
最初に聞かせていただいたのは
ザ・モンキーズ(The Monkees)の『Daydream Believer』。
ポップな曲と可愛らしい歌詞で
発表された当時も大人気だったというこの曲に続いて
ビートルズのYellow Submarineの2曲の練習に参加させて頂きました。
どちらの曲もとてもメジャーな曲なので
色々な所で耳なじみのある曲。
わたしにとっては今までのどこで耳にした時より
曲自体が楽しめた最高の時間でした。
細かい事を色々考えて留まらず、音楽を楽しんで
もし合わないことがあっても1つの曲を複数の人と一緒に楽しむ
そのことが楽しい!
という音楽の根っこのようなところに触れられたからだと感じました。
<聞こえないって幅広いということ>
よくこのブログでも紹介していますが、
聞こえない事にもグラデーションがあって
あなたと私の聴力検査の結果が全く全て同じだとしても
聞こえは感覚器官の反応でもあるので
聞こえ方は厳密に言うと異なるものです。
少し前に、見え方も人によって違う という
画像比較が話題になったこともありましたが
自分の当たり前は周りの人の当たり前ではない、ということは
ついつい忘れがち、どころかそもそもその事を知らない人もいるかもしれません。
こちらの中ほどにある動画の説明がとても解りやすいです。
ちょうど、Leiceter大学の方が「聞こえというもの」の多様さを
マインドマップのように整理したもの(常に更新中とのこと)を公開していたので
少しだけ共有します。
紹介されていた記事はこちら
「健聴」とか「難聴」というのはあくまでも
数値でその人の現状の状況を把握するためのものであって
その人がどう感じているかはその人にしか分かりようのないものです。
もちろん明らかに数値に差がある場合は
不便なことも起こるため、その不便さの解消に色々な技術を工夫して使っていきますが
そのことにとらわれ過ぎて、交流が無くなってしまったり
接し方がわからない、となる「健聴」の人が余りにも多いと感じます。
上で紹介した図のように、『聞こえること』も
『不便さの解消の仕方』もひとそれぞれ。
聞こえているから、聞こえていないから
どちらかが正しかったり間違いだったりするわけでもありません。
自分がその立場に立ってみないと不便さというものには触れにくいものですが
自分と違う立場の視点・感じ方・聞こえ方を
決めつけてかかったりすることなく
出来る事を一緒に楽しんだり
不便さをお互いに助け合ったり
そんなことが当たり前になる世界線を
未来の子ども達に遺して行きたいな、と改めて思います。
凄く楽しい体験と、ほんとにこの世界観が広まったら良いのに
と心から思う時間を共有させていただいた
軽音楽部!難聴派 の皆様に感謝の気持ちです✨
ここまでお読みいただきありがとうございました!
ご意見やご感想などもいただけたらとても嬉しいです☺
JINO Goji