みみの会社のブログ_JINO

耳に関するヒト・モノ・コトについてご紹介するブログです。

コーダ・ファイトソング・妻小学生になる のこと

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この記事はエンターテイメント作品の変化に思う事と

人が他者と自分、喪失という体験に対して向き合うことについて

考えたことをご紹介しています。

 

<3月は耳の日のある月>

気づけば桜や沈丁花、菜の花と言った春を告げるお花が咲き始め

あっという間に3月も残すところあと数日ですね。

 

気温差の激しい日が続いていますが皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。

 

聴覚関係のお仕事に従事している多くの方が

同じの感想をお持ちだと思うのですが

3月は1年の中でも比較的忙しい月です。

何故かというと3月3日が耳の日だから。

 

jpnculture.net

耳の日に合わせて啓発のイベントやセミナーが開催されることが多いので

通常の業務に比較してお仕事の量が増える季節です。

一昨年・去年・今年共に人を集めるのは難しいため

オンラインなどで行われていましたが

今後はどうなっていくんでしょうね。

 

耳の日の前後に関連の記事などが増え

記載されるコメントを眺めていたら

まだまだ「障害」は社会の問題ではなく

「個人の喪失・足りない特質」といった捉え方が多く

「障害」という概念を社会から無くすのには

まだまだハードルが沢山だなと改めて思いながら過ごしました。

 

<エンターテイメント作品の変化>

そんな気持ちが前向きになる芸術作品が

最近増えて来ているのかな

と感じたのが、ここ最近の映画やドラマにおける変化。

特に今回のタイトルにした作品は心に残る点が多くありました。

 

1つは映画「コーダ」

もう1つはドラマ「ファイトソング」

もう1つは放送第1回から昨日の最終回まで

涙なしに見られる回が1度もなかった(私だけかもですが)

ドラマ「妻、小学生になる」

です。

 

最初の2つの作品にはろう者・CODA・中途失聴者が出てきます。

「妻、小学生になる」には亡くなった人の魂が出てくるので若干ファンタジー

ジャンルが全然違うんですが3つの作品とも、

私にとっては感じたメッセージが同じでした。

 

受け手の感じ方は自由、という事で

作り手の方からしたらイヤイヤイヤ、という解釈かもしれませんが

お許しいただければと思います。

 

3つの作品にまず感じた共通点は暖かさ

世の中の人がみんなこんな風に人と人として触れ合えたら

生きやすい世界になるなあ、という気持ち。

 

是非3つとも見ていただきたいなと思うので

ストーリーの詳細は作品で受け取ってもらえたらと思います。

 

概要だけさっくりお伝えすると

映画「コーダ」は父母兄3人がろう者、主人公のみ聴者という家族の

互いを思う愛と、互いの生きかたの方向に変化が起きた時に

受け容れ合い前を向く姿。

 

gaga.ne.jp

 

ドラマ「ファイトソング」は児童養護施設で育った主人公が

血は繋がっていないけれど結びつきの強い家族の中で

事故が元で聴力に変化が起きてその後も変化する自身の環境や

状況に周りの人たちと一緒に向き合いながら過ごす姿。

 

www.tbs.co.jp

 

ドラマ「妻、小学生になる」は10年前に最愛の妻・母を

突然の事故で失ってから生きる気力を失った夫と娘の変化と

命を失いながらも家族を思う気持ちが強く成仏できなかった妻・母に起きる

ファンタジーな触れ合いの中で、家族が変化していく姿。

 

www.tbs.co.jp

 

という感じです。ざっくりでこの要約だと作品見たくならないですね・・

3作品に共通する暖かさとは別に共通しているなと思ったのが

人の関係性と喪失を多面的に向き合いながら表現しているな~という点でした。

 

エンターテイメント作品に今まで多かったのが

何らかの「障害」や「喪失」を、良い話や、見世物的に

ドラマティックに「感動消費の材料」として使う事で

当事者側からの視点でいうと、うん…という

残念な気持ちになる事が多くあり、

その残念さが話題になることもよくあります。

 

芸術作品なので日常全部を伝えきるわけにもいかず

どうしても「ある側面」を切り取らざるを得なかったり

そういう傾向が出やすかったりするという事は承知の上でも

この3作品はなるべくそうならないように、

制作した方たちが多面的な世界観を表現するように心がけていたのかな、

と受け取れる面がとても多かったです。

 

例えば映画「コーダ」では

・ろう者の家族から見えている世界と

聴者の家族や周りの人が見えている世界を

一瞬でしたが演出する場面(方法にはつっこみたい所もありましたが)

・個人的に涙腺が最も緩んだお父さんと娘の夜のトラックの荷台での会話

・ろう者の立場からみた聴者と言われるマジョリティ属性の人たちの

無意識の中にある差別や、善意の中にもある差別意識

 

セリフ、表情から読み取れる点がとても多かったです。

ろう者の役者さんが活躍されている映画なので不自然さもなくて、

物事を関わる人それぞれの立場から見た描写が心に響く作品でした。

 

※ちょうどろう者の役者さんについての記事が配信されていましたのでご紹介↓

www.huffingtonpost.jp

 

ドラマ「ファイトソング」では

実際に中途失聴者の方々に監修を依頼されていたのもあって

・UDトークという文字起こしの補聴援助アプリを駆使

・筆談ボードが手に取りやすいところにある

・聴者がゆっくり話すぎてかえって解りにくい

等の演出がリアル&みんなこんな風に自然に受け容れてくれたら

生きやすいのになあ、という感想が強く残ったのと同時に

いくつか監修の意見が取り入れられていない場面があって

(実際に監修に携わった方からお伺いしたので判明したのですが)

ラブストーリー上都合よく展開されてしまった

残念な部分もあって、それもある意味見どころでした。

 

※UDトークの魅力は結構話題になっていて嬉しい反響でした↓

johnnys.jocee.jp

 

ドラマ「妻、小学生になる」では

大切な家族、心の支えを失った側の

前向きに変化する姿という視点だけでなく、

・亡くなった側から、辛い事や思うようにいかないことがあるけど

1つ1つ小さな幸せを見出すのは自分自身だと気づかされる

・亡くなった側からのもどかしさを想像する視野の広さの大切さに気付かされる

という点や、

・偶然ファンタジーに巻き込まれた人たちの立場から

時には面倒くさく感じることもある人と人の関り合いも

自分が生きている以上は、大切に無理なく向き合った方が楽しく過ごせるかも

という描き方が秀逸な作品でした。

 

特に、大切な人を失った経験のある人なら

誰しもが思う、もう1度会って話したい、触れ合いたい、

もう1度大好きだと伝えたい、という夢を物語にするだけではなくて

どうせ生きているなら楽しく美味しく(ドラマの中のセリフです。)

生きたほうが楽しいじゃない!という気持ちになったり

「おはよう」「おやすみ」とか「いただきます」「ごちそうさま」

という日常に意識せずに使っている挨拶を交わす時間が

どれだけ尊い時間なのか、という事も思い出させてくれる

ファンタジーなのに深い愛情に富んだ作品でした。

今日の夜TVerでもう一度最終回見ようと思っています。笑

 

※いろいろな紹介記事の中で一番共感を覚えたものをご紹介↓

news.yahoo.co.jp

 

素人が感動しただけではありますが

複数の視点から複数の意見が優しく包み込まれる

という作品たちの描き方は見ていて心地が良くて。

もっと細かく語りたいのですが長くなっちゃうので

また機会があれば別途で。

 

この3つの作品のように、暖かさと他者への敬意と愛情を持って

生き方や多様性の受け容れ方や、

喪失との向き合い方を啓発していく作品が

これからもっと増えていくのかな、と考えた3月でした。

 

JINOとしても難聴のことや、耳のこと、

聞こえない・聞こえ辛い ことに、

もっと関心を持つ人が増えてくれるようにという働きかけを

敬意と愛情たっぷりに続けて行きたいなと思うのでした。

 

そして人を集める事に抵抗や問題が少なくなってきたら

開店前に考えていたステキな映画の上映会なども

ついに実現できると良いな~などと目論んでいます。

 

ちなみに一番最初に自主上映したいのはコチラ!↓

実現したいなあ~~

longride.jp

以前こちらの作品を紹介した記事を書きましたのでよかったらご覧ください!

jino33.hatenablog.com

 

長文読みいただきありがとうございました!

紹介した作品、まだご覧になられていらっしゃらない方は

是非見てみていただいて、感想なども教えていただけたら嬉しいです!

 

気温差が激しく世界情勢もここ数年にも増して不安定ななか

心と体の管理が大変ですが

皆様、引き続き健やかにお過ごしになれますように。

 

JINO GOJI