この記事は
・難聴と認知症の関係
・杉並区の取り組み
・身近な人が認知症になること
を中心に、巻き込み力の重要性を紹介しています。
<認知症と難聴の関係性>
あっという間に10月ですね!
気づけば金木犀のよい香りがして
お日様が沈む時間も早くなりましたね。
皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか。
今回は認知症サポーターの1人として
店舗のある荻窪で訓練に参加して気づいたことをご紹介します。
みなさんは難聴と認知症の関係性についてはご存じでしょうか。
2018年に2本の論文が発表されました。
1つは、ジョンズ・ホプキンス大学の方が発表された
1999年から2016年までの保険のデータベースを元に
難聴を持つ/持たない高齢者の医療費比較。
Trends in Health Care Costs and Utilization Associated With Untreated Hearing Loss Over 10 Years.JAMA otolaryngology-- head & neck surgery. 2019 01 01;145(1);27-34. doi: 10.1001/jamaoto.2018.2875.Nicholas S Reed, Aylin Altan, Jennifer A Deal, Charlotte Yeh, Alexander D Kravetz, Margaret Wallhagen, Frank R Lin
もう一つはブルームバーグ講習衛生大学院の方が発表された
Incident Hearing Loss and Comorbidity: A Longitudinal Administrative Claims Study.JAMA otolaryngology-- head & neck surgery. 2019 01 01;145(1);36-43. doi: 10.1001/jamaoto.2018.2876.Jennifer A Deal, Nicholas S Reed, Alexander D Kravetz, Heather Weinreich, Charlotte Yeh, Frank R Lin, Aylin Altan
この2本から引き出されたキーワードは
「高齢の方の難聴を治療せずに放置することによって
というものでした。
この論文の以前にも、認知症と難聴に因果関係があるのでは
という話題は聴覚業界で頻繁に上がっていて
国立長寿研究センターの先生の論文発表などもあり
認知症は私たち、難聴に関わる仕事をするものにとっても
勉強が必要な病気の1つになりました。
そのため、お店を開くにあたり、地域で行われている
認知症サポーターの講座を受け、
認知症ケアについての勉強を続けています。
なお、耳のそうだん室JINOは認知症サポーターのいるお店です✨
そこで今日は、杉並区で実施された
まち歩き声かけ訓練&みまもりあいプロジェクトに
参加してきて、発見したことをご紹介したいと思います。
<杉並区の取り組み>
杉並区では地域全体で、認知症の方と介護者の方をサポートする
取組を様々おこなっていらっしゃいます。
その1つが今日行われた訓練です。
ケアセンターの方や、認知症介護家族の会の方などが参加され
声掛け役と認知症の当事者の方役に分かれ
それぞれ専門家の方々のサポートを受けながら
声掛けを体験するという訓練を受けました。
その中で、とても素晴らしい仕組みだな、と思ったのが
こちらのみまもりあいアプリ。
介護者の方が、家族が行方不明になってしまわれた時に
多くの方に周知するためにも使用できますし
協力者として、その情報を見つけた時に
あ、あの方もしかして??と見かけた際
声をおかけして、発見を早くするなどのサポートが出来ます。
実際に今日の訓練では
1)アプリを使って特徴を把握している方への声かけ
2)お名前や住所がわからない方への声かけと持ち物からの発見誘導
3)お名前も持ち物もない方への声掛けと誘導
の3種類の声かけを訓練させていただきました。
実体験して非常によかったな~と思ったので
是非この訓練は幅広い年代の方に体験して欲しいなと思いました。
具体的に何が良かったと言いますと、
巻き込み力の重要性を思い知ったということに尽きます。
1人でなんでもやろうとしても、
何にもうまく行くことはないんだ
という事を改めて実感させていただきました。
認知症になられた方の中には
知らない人に声を掛けられただけで
怖がられたり、お怒りになられたりする方もいらっしゃいます。
お声がけしてお名前も何も分からない方の
ケガがないか、水分は足りているかなどの体調を確認したり
とにかく安心できる場所にお連れしてあげなくてはいけない方もいらっしゃいます。
体調の確認、お名前の聞きだし、必要があれば
警察や消防の方への連絡など、1人で対応するのは無理がありますし
認知症をお持ちの方から後から責められてしまうことも考えられます。
お声がけする際は大勢で行く必要はないのですが
お声がけ出来て少しリラックスが出来たり
安全が確認できる段階で近くの人を
どんどん巻き込む必要があります。
JINOと同じく認知症サポーターとして
街を守ろう!という取り組みをされているお店が沢山あります。
そういった環境作りを進めている杉並区の取り組みは
とても有意義だな~
町全体で住んでいる人に住みやすい暮らしを作ろうとしているんだな~
ここでお店が開けてよかったな~
と改めて思った訓練になりました。
お住まいの自治体などで同じような取り組みがあれば
是非参加されることをおススメしたいです!
<身近な人が認知症になること>
町という大きな単位での取り組みも大事ですが
個人個人が、自分に出来る事として
認知症サポーターのような勉強をすることもすごく有意義だと思っています。
私の個人的な体験で恐縮ですが
癌の傷口から肺炎を併発して、
20年前に亡くなりました。
父の兄妹もその後皆発症したので、おそらく自分も遺伝子として
引き継いでいるものがあると思っているため
この病気に対してはすごく不安感を持っています。
遺伝子にもスイッチがあるというのが解ってきているので
遺伝子を持っていると必ず発症するというわけではないのですが
一番怖いなと感じているのは、「自分」という存在に対して
分からなくなってしまうだと思っています。
実際、父の症状が進行するなかで最もつらかったのは
父の記憶の箱の中から、
わたしたち子どもの存在が出てこなくなってしまったこと。
認知症サポーターとしての講習を受ける中で
色々思い出して涙が出てしまうこともありましたが
20年以上過ぎているのに、
何とも言えない寂しさ、虚無感があるほど
インパクトの大きい出来事でした。
身近に障害という課題を持つ人が多かったため、
色々な課題には対応力がある方だと思っていたのですが
全く対応しきれなかったことを覚えていますし
未だに、何かもっと出来る事があったのではないかと
悔やむことも多いです。
実生活の体験で学んだこと、
認知症サポーターの勉強過程で学んだこととして、
認知症は症候群なので、色々な症状の方がいらっしゃる、
どんな方に対しても必要なのが
「認知症だから困っている」と決めつけないこと、です。
これは他の色々な課題を持つ方に対しても通じる事ですよね。
相手の方の自尊心に対し敬意を払うこと。
お困りごとがあれば、その方にお伺いして対応すること。
相手の方慮ることがとても大切なのは
どんな関係性においても同じで、
1人で抱え込まない、というのも全く同じだなと
訓練を通して改めて思った次第です。
<巻き込み力の重要度>
何らかの病気になったり、何らかの課題を抱えたり。
平常運転できた毎日に、変化が起きることは
誰にも望ましいことではないかもしれません。
大変なことも増えるかもしれませんし
辛いという気持ちになることもあるかもしれません。
そんな時、1人で何とかしようとせず
誰かに相談してみる。
何も期待する必要はありません。
期待すると期待した応えがかえって来ない時に
辛いという気持ちになってしまうことがあるので。
とりあえずなんでもいいから巻き込んでみる。
自分から積極的に声をかけて
周りの人を巻き込んでいく力をつけてみる。
そうすることで、1人ではとても無理だと感じる事や
1人では辛すぎると感じることが楽になることがあると思うのです。
そのことで、関わり合ってくれる人たちにとっても
肩の荷が下りたり、楽しいと思えたりすることがあると思います。
巻き込み力って
社会で生き抜いていくのに
もしかしたら一番大事なことなんじゃないかな、
と気づいた訓練体験でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ご意見やご感想など、いただけたら嬉しいです!
JINO GOJI